小津安二郎監督『東京物語』、英国で最高評価!
小津安二郎監督の映画
久々に(数十年ぶり)小津監督の映画を10本DVDで観た。いつも家族とかホームドラマの原型みたいな物語で、大事件が起きるわけでもなく淡々とした展開、独自の美学で一貫していながらある意味ではオリジナリティとかマンネリを超越した小津作品。この歳で見ると初めて観た30代の頃と見る視点が変わった気もする。自分が、出てくる登場人物の親世代側になっちゃってるからかもしれない。
不自然に盛り上がったりする展開より普通の人々の普通の生活こそ一番ドラマティックなんだ、と小津監督と脚本の野田高梧は言いたいのだろう。そして輪廻のように繰り返される人生をこのカタチで描いたのか・・・やはり深いものがある。写真右側は野田高梧と小津監督が脚本を書くために篭った信州蓼科の雲呼荘。
1936年の小津監督最初のトーキー作品『一人息子』は飯田蝶子主演。原節子が紀子という役名で出演しているため紀子3部作と言われる『晩春』(1949)『麦秋』(1951)『東京物語』(1953)。原節子さんも3年前に95歳で亡くなった。あの時代に原節子のあの洋風な美貌は太陽のような輝きをもつ。
『東京物語』は英国映画協会『Sight&Sound』誌発表する映画監督が選出する映画部門で、映画歴史のすべての映画の中で2012年に第一位になっている。小津作品は欧米のインテリ映画人には圧倒的な評価をされている。
昔の東京の風景だけでなく北鎌倉の風情、踏切は小津映画の風景といえる。どの作品にもほぼ出演している笠智衆のさりげない存在感も小津作品の顔だ。『東京物語』の時の笠智衆はまるで70歳くらいの感じだが当時彼は48歳、見事な老け役。時に教師、パチンコ屋のオヤジ、トンカツ屋、大学教授、大手企業の部長、などどんな役でも笠智衆さんが出てくると温かい。
昔の東京の風景や話し方の違い、逆に今と同じニュアンス、また銀座でお茶するシーン、家でコーヒー飲む習慣はこの頃からあったんだ、とかすべて興味深い。そして杉村春子、東野英治郎といった舞台人の名演技が支えている。ワビ、サビ、ム、の世界観が根底にある。ハッキリしたい人にはかったるいだろうな。
『秋刀魚の味』(1962)の劇伴音楽(斉藤高順作曲)が最近清涼飲料(確か)のCMにリメイクされたのは驚き・・・でも合っていた。
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