日本棚田百選に選ばれた「稲倉の棚田」の近く。美ケ原や北アルプスを望む絶好のロケーションにある「あんこ坂」は、自然食が味わえるカフェ。お米は、八重原産の無農薬玄米を使用。お店のロゴに「玄米ごはん」と謳っているだけあって、玄米はこちらの顔でもあります。昨今流行っている玄米食ですが、時流に乗ってのことではありません。自然食の第一人者である東城百合子先生の教えに基づき、日本人が昔から大切にしてきた体に負担がかからない食事を提供しているのです。大きな窓から眺める景色と聞こえる鳥の声、彩り豊かで体に負担がかからないお料理で、五感全部で元気になれそうです。
お店を訪れると、常連さんから“のんこさん”の愛称で親しまれているオーナーの入谷徳子さんが、つるつるのお肌とピカピカの笑顔で出迎えてくれました。調理も接客も一人でこなしているので、当日でもいいので、必ず予約をしてから来店してください。
玄米はボソボソしていて苦手という人もいますが、専用の圧力鍋で炊く「あんこ坂」の玄米はモチモチとした食感が特徴。小豆とハトムギがアクセントとなり、食べにくいどころかまた食べたくなります。食欲が落ちる暑い時期にはモチモチ感を抑えるなど、季節によって浸水時間や炊き時間を変え、炊きあがりに変化をつけているそうです。
肉の代わりに豆やゴマなどの植物性たんぱくを使うよう工夫されたランチは週替わり。一汁四菜が基本で、野菜がふんだんに使われています。この日のメインは「車麩のトンポーロウ」。玄米や自然食の店というと味が薄いイメージがありましたが、ダシの旨味がきいた「あんこ坂」のおかずは味がしっかりしていてご飯がすすみます。野菜は、皮や根っこまでまるごと“一物全体”を使います。歯応えがしっかりしていてよく噛むのでお腹も満たされます。「自分が美味しいと思えないと人に勧められないので、美味しいと思えるものをお出ししています」とのんこさん。
月に一回、土曜日開催される「ぱんランチ」の自家製パンも好評です。
野菜がとれる時期にはご主人が育てた無農薬野菜を、それ以外は地元で無理なく手に入る野菜を選びます。できる限り安全な食材を選ぶよう心掛けていますが、それほど神経質に“無農薬”には固執しないのは、「人間の体はそんなにやわじゃない」という考えから。「私たち人間が本来持っている解毒力は素晴らしい機能です。ただし、まがい物の調味料はそのじゃまをしてしまう」のだそうです。
料理の基本となる調味料だからこそ、添加物は使わないというのは大前提。国産無農薬で自然醸造のものの中から、試してみていいものを厳選しています。一年味噌・梅酢・果実酒など、できるものは自家製。発酵食品は熟成するほどいいので、東城先生おすすめの「六年味噌」も使用しています。菜種油やゴマ油といった油選びも重要。原料が国産で「玉締絞り」のものを選んでいます。
あんこが得意なのんこさんのイチオシ「ガトーあんこ」をはじめ、お菓子は全て独学でつくっています。種類により卵を使うこともありますが、白い砂糖・牛乳・バターは一切使いません。素材の甘味だけで足りない場合は、必要最低限の黒砂糖やてんさい糖で甘味を加えます。「一般的な料理本を見て、いかに材料を置き換えるか試行錯誤の繰り返し」なのだそうです。よく参考にするのは、素朴でアレンジしやすいイギリスのケーキ。膨らまないずっしりとしたタイプのケーキが多く、「材料費は結構かかってますよ」と笑う。
豆乳のホワイトクリームが添えられた「ビクトリアンケーキ」、オートミールの歯ごたえが楽しめる「オーツケーキ」、春ならではの「デコポンのボイルドケーキ」……どれも優しい甘さで、スイーツを食べた後独特の胸焼けや胃もたれを感じなかったことに驚きました。
そんなお菓子たちと共にぜひ味わってほしいのがコーヒー。オーガニックやフェアトレードの生豆を仕入れ、学生時代からコーヒー好きで、コーヒーインストラクターの資格を持つご主人が焙煎しています。のんこさんも、「新鮮なコーヒーはほのかに甘味があるんです。家で美味しいコーヒーを飲み慣れてしまったので、外出先でなかなか美味しいコーヒーに巡り合えないほどです」と胸を張ります。将来的には、「お菓子の日」を設定し、いろいろなお菓子とコーヒーを目当てに足を運んでもらえるようにしたいそうです。
のんこさんが自然食に興味を持ったのは20年ほど前、千葉県流山市に住んでいるとき。娘さんの幼稚園の先生の影響だったそうです。最初は玄米の炊き方を学ぶために東城先生の料理教室に通いましたが、その教えに感銘を受け、結局1年半かけて上級・研究課程まで修了しました。その後、ご主人の転勤で福岡へ。本州に戻ったらカフェをやりたいと考えるようになり、2009年にご夫婦でこちらへ移住。現在はご夫婦と愛犬(あずきちゃん)の3人暮らしです。
ご自身のお父様の出身地である長野県に親しみがあったのんこさん。ご主人の新幹線通勤を考慮し、上田で土地を探しているとき、業者さんからこの近くの土地を勧められました。そこに向かう途中でたまたま通りかかったこの場所をご主人が気に入り、業者さんに伝えると、偶然業者さんの親戚の土地だったためスムーズに譲ってもらえたのだそうです。「最初は農業放棄地で草だらけで、私はピンとこなくてね。住んでから『ひょっとして北アルプスが見えてるんじゃない?』って気付いたくらいでしたが、主人はここなら素敵な店ができるとイメージできていたんですね。一目で気に入ったようです」。今ではのんこさんのイメージにぴったりの場所。きっと縁あって引き合わされたのだと思えてなりません。翌年には「あんこ坂」をオープン。建物は、古民家再生で有名な安藤建築設計工房さんが「かもめ食堂」をイメージして設計したそうです。冬は薪ストーブが店内を暖かく包んでくれます。
私が大切にしていることはホームページに綴っているので、皆さんに読んでいただけると嬉しいのですが。
「あんこ坂」の基本はお米。玄米は、撒けば目が出る“いのちのもと”です。人間の体は食べ物からできています。食べ物を軽視していると、病気になることもあります。たとえ病気になっても遅いということはありません。今よりも元気になればいいと思います。ただし「健康にいい」というのは重要ですが、やはり「美味しく食べる」って幸せですよね。食べるのが好きな人はメリハリのある生活をしていると思うんです。「何でもいいからお腹に詰めておけばいい」というのは楽しくないんじゃないかな。だからこそ、美味しくてしかも体に優しい料理をお出ししたいと思っています。
友人がこんなことを言っていました。「儲けない 客を増やそうと思わない 勉強し続ける」って。お店は自分の生き方の現れだと思うので、これは私のスタンスにもなっています。負け惜しみではないですが、儲けに走ると偽物になっていく気がするんですよ。そうは言っても、もちろんお客さまが来てくださったらそれに越したことはないし、作ったお料理を召し上がっていただくことで喜びも倍増しますから。
東城先生の教えは、料理だけではなく生き方の教えです。「信州上田あずき學舎」を立ち上げ、東城先生の教えに基づいた料理と自然療法の講座をしています。興味のある方はお声掛けください。
ホームページURL | http://shop.asama-de.com/b/ankozaka/ |
電話番号 | 0268-71-5030 |
FAX番号 | 0268-71-5030 |
郵便番号 | 386-0004 |
住所 | 長野県上田市殿城2648-1 |
営 業 時 間 | Lunch Time 12:00〜14:00 Tea Time 13:00〜15:30 |
営 業 日 | 水・木曜日 |
駐 車 場 | 6台 |
備 考 | 自然療法(こんにゃく湿布、その他お手当)の出前授業承ります! |