ゴールデンウィーク中は、人影の少ない静かな酪農地帯も、帰省する人や近くの別荘地に来る人達、通りすがりの観光客などで突然人口が増える。
そんなのどかな高原に位置する、引退をした馬が暮らす牧場「まきばカフェ」にも、毎年普段より多くの人々が訪れるのだが、そんな中、見知らぬ横浜ナンバーの車がニセアカシアの巨木の並木と放牧場の冊の間に伸びるデコボコの小道を、厩舎がある高台の方へゆっくりと上って来た。厩舎のまわりで遊んでいる馬が道路へ出て行かないように、一本の棒をアカシアの木と冊の間に横に通して小道をふさいでいたので、車はそこで停車した。私が棒を開けに行くと車の女性が「コーヒーいただけます?」と言った。
「まきばカフェ」というネーミングは、まきばにいる「カフェ」という名前の27才になる雌馬の名前にちなんで付けたのものだが、ごくたまにコーヒーショップかレストランと間違えて入って来る人がいるのだ。
車の中の感じの良い二人の年輩の女性に「ここはコーヒー屋さんではないのですが、せっかくですから馬の顔でも見ていらっしゃいませんか?」と言うと、女性達は「ごめんなさいね、でもお言葉に甘えて少しおじゃまさせていただこうかしら。」と、同乗させていたビーグル犬と共にニコニコしながら車を降りた。

厩舎を案内しながら馬を紹介して歩くと、彼女達は動物がお好きらしく「コーヒーよりずっと良かったわ!」
と感嘆し、ビーグル犬のJちゃんも始めて馬を見たという割には堂々としたもので、始めにちょっと吠えたぐらいで、後は興味津々という顔で付いて歩いた。
インスタントコーヒーをお出しして丸太のベンチに座りながら自己紹介やお話をしているうちに、お二人の別荘と私の自宅が道を挟んだ目と鼻の先ということ、Fさんの方はハープと「くご」奏者といこと、Mさんは趣味でウクレレを弾かれていることなどがわかり、あらら〜!実は私もシンガーソングライターなんです〜!と言ったぐあいに話はおおいに盛り上がった。「くご」という楽器は日本古来のハープのようなもので、何と4千年前から存在していたのだという。出土されたその楽器を復元して日本の何人かの人が演奏しているらしい。Fさんは万葉集のうたに曲を付けて歌っているのだというからまさにシンガーソングライターなのである。
そうこうしているうちに、そのFさんが声を弾ませて「そうだわ!5日にすぐ近くのM湖のレストハウスで南米音楽のコンサートがあるのでいらっしゃいませんか?」と言い出した。「南米音楽って、フォルクロ−レですか?」「そうですそうです。」「うわー!私フォルクロ−レが大好きなんです!是非行きます。」「まあ良かったわ。それじゃあついでと言っては失礼ですけど、あなたも是非出演して歌って下さい!」

と言う訳で話はトントンと決まり、3日後の5月5日に開催されるコンサートに急遽参加させていただくことと相成ったのである。
南米アルゼンチン、ペル−、ボリビアなどの土着の音楽フォルクローレは私の大好きな民族音楽のひとつで、普段からボリビアのミュージシャン「スルマユガ−ル」「コンドルカンキ」などのCDを聴いたり、日本のボリビアフォルクローレの草分け的存在である「グルーポカンタティ」のライヴへ何度か出向いたりしているくらいなので、5日はどんな人達とジョイント出来るのか想像すると何だかとってもワクワクしてきたのである。
つづく